香港の高層マンションで発生した大規模火災では、28日午前8時時点で94人の死亡が確認され、火は消し止められていません。
なぜ、火は燃え広がったのでしょうか。出火直後の新たな映像から、その理由が見えてきました。
■崩れ落ちる竹の足場
日本時間28日午前6時すぎの映像です。建物内から漏れる懐中電灯の明かり、夜通しの捜索活動が続けられています。
しかし、その数階下ではいまだ炎が見えます。中から消火を行っているのでしょうか?すぐ隣に明かりも見えます。
出火当初を捉えたとされる映像。火はあっという間に燃え広がり、足場の竹が崩れ落ちていきます。
香港の集合住宅で発生した大規模火災。一夜明けた27日も、懸命な消火活動が行われました。
死者は27日から増え94人に。現場に駆け付け、犠牲となってしまった消防士は来月、結婚する予定でした。
死亡した消防士の婚約者からのメッセージ
「私のスーパーヒーローは任務を終えました。あなたは私の誇りです」(現地メディアによると)
住民は、改装工事中の作業員の危険な行動を目にしていました。
住民
「『たばこをやめて、とても危険ですよ』と言ったら『はい、分かった分かった』と答えただけでした」
■亡くなった消防隊員 来月「結婚」予定だった
26日、香港で起きた高層マンションの大規模火災。発生から丸一日以上たった27日夜も、窓から炎が出続けていました。
27日になって、新たに最上階の31階にいた男性が救助され病院に搬送されました。
住民の男性
「他の住民から、火災報知器が作動していなかったと聞きました」
香港メディアによると、28日午前8時時点で94人が死亡、けが人は76人に上っていて、そのうち40人が重体。270人以上(27日時点)の安否不明者の捜索が続いています。
妻が行方不明の男性
「妻はまだ中にいます」
「(Q.避難しようとはしなかった?)電話して逃げるように伝えました。彼女は部屋を出ましたが、階段が黒い煙で何も見えず、階段をおりられなくて、仕方なく部屋に戻ったんです」
香港メディアによると、消防活動中に亡くなった37歳の消防隊員は、来月に10年交際した女性と結婚する予定だったといいます。
死亡した消防士の婚約者からのメッセージ
「私のスーパーヒーローは任務を終えました。あなたは私の誇りです。でも、ごめんなさい。私は本当に、この事実を受け止められないです。もう一度、あなたの手を握りしめたいです」(現地メディアによると)
火災の状況も、徐々に明らかになってきました。
火災現場からおよそ1キロ離れた学校で勤務するポール・マリオットさん(45)はこう話します。
「煙がすごくなってきたのが、午後3時45分ごろだと思います。生徒たちの下校時間の少し前だったので」
香港当局によると、火災の発生は26日の午後3時ごろ。男性が火災に気づき撮影したのは3時7分。火災発生から5分ほどで、すでに大量の黒煙が上がっているのが分かります。
「とてもショックでした、心の中で何が起こったんだと思いました。とてもショックを受け、驚きました。とても悲しかったです」
学校が終わった後も現場近くで撮影を続けていたといい、その映像には、刻一刻と火災が広がり、建物から炎が上がっていく様子が記録されていました。
「火災で亡くなった37歳の消防士は私の知人です。私の友人と、よくバスケットをしていました。自分の知り合いが今回の火災で亡くなったということで、とてもこたえています」
■急速に延焼「発泡スチロール」も関係か
27日、消火活動が続く中、現場で見守る住民たち。
火災が起きたマンションの住人
「このマンションを買ってから、20年以上が経ちます。すべてを投じて買ったけど、もう何も残っていません」
火災が起きたマンションがあるのは、香港の中心部から北に20キロほど離れた場所に位置する「宏福苑」です。
31階建て、8棟のマンションからなる高層マンション群で、そのうち7棟で火災が起きました。
建物は築42年、およそ4600人が住んでいて、4割近くが65歳以上の高齢者だったといいます。
中国のSNSに投稿された、火災が起きたマンション内を映したとみられる映像です。
間取りは2LDKのおよそ40平米。キッチンを抜けると、L字のリビングが広がり、その奥に2部屋。動画には299万香港ドル、日本円でおよそ6000万円で購入可能と書かれています。
間取り図を見ると、中央のエレベーターや非常階段を取り囲むように部屋が配置され、1フロア8部屋。
映像が投稿されたのは今月初めで、よく見ると、窓には白い板が貼られていて、緑色のシートに覆われているように見えます。
香港メディアによると、昨年、大規模修繕が決定され、改修工事が進んでいました。
1年前に撮影されたマンションの写真。マンション全体が、すっぽり緑色の防護ネットに覆われています。
この改修工事の足場が原因で、急速に燃え広がったとみられている今回の火災。もう一つ指摘されているのが…。
香港警察
「発泡スチロールが、火の手が迅速に広がった原因の可能性を排除できない」
別の室内を映した動画では、窓ガラスがすべて白い板で覆われていました。警察当局は、この窓ガラスなどに貼られていた発泡スチロールが火の勢いを急速に強めたとみていて、捜査を進めています。
27日、現場を見てみると、焼け残った側の窓ガラスには発泡スチロールとみられる白い板が残ったままでした。
■気になる“くぼみ”「煙突効果」か
出火当初を捉えたとされる映像。マンションの1階部分が燃えているのが分かります。
火はあっという間に上へと燃え広がり、足場に使用していた竹が次々と崩れ落ちていきます。
火が急速に燃え広がっていったのは、この建物の構造が原因になった可能性があるといいます。
マンションのフロアマップを見てみると、各部屋と部屋の間にくぼみが多くできています。
元麻布消防署所長の坂口隆夫さんは、この狭くなっている部分が延焼に影響している可能性があるといいます。
「くぼみの部分に上昇気流が発生したと思う。上昇気流にのって激しく上に燃え上がっている。これは煙突効果とみていいですね」
火災が発生した26日の映像を見てみると、くぼんだ部分で激しく炎が立ち上っていく様子が捉えられています。
この火災により94人の命が犠牲となり、多くの住人が避難生活を余儀なくされています。
現場からすぐそばにある避難所には、数多くの人が避難してきています。ボランティアも多く詰めかけていて、物資の支援などを行っています。
避難したマンションの住民
「消防士がドアをたたきに来ました。『外に出て』と言われて、彼の後について外に出た。なので着の身着のままです」
火災が急激に広がった要因とみられているのが、竹で組んだ足場と耐火性のない防護ネット。
さらに住民からは、延焼した原因についてこんな指摘も…。
避難したマンションの住民
「たばこを吸いながら作業をしていました。私はその作業員とけんかしました。『たばこをやめて!とても危険ですよ』と言ったら、『はいはい、分かった分かった』と答えただけでした」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年11月28日放送分より)