現職の国会議員夫妻による前代未聞の巨額買収事件。地元議員、首長、支援者ら100人に現金をバラまいた事件は、なぜ起きたのか。
これまでの広島ホームテレビ報道部の取材をまとめました。
2019年 | 7月21日 | 参院選で河井案里氏 初当選 |
9月11日 | 河井克行氏 法務大臣就任 | |
10月31日 | 週刊誌のウグイス嬢違法報酬報道をうけ辞任 | |
2020年 | 1月15日 | 河井夫妻自宅と事務所に家宅捜索 |
3月3日 | 案里氏の秘書らを逮捕 | |
6月18日 | 河井夫妻を逮捕 | |
8月31日 | 案里氏秘書 広島高裁でも敗訴 上告 | |
10月27日 | 河井案里氏 保釈 | |
2021年 | 1月21日 | 河井案里被告に懲役1年4カ月(執行猶予5年)有罪判決 |
3月3日 | 河井克行氏 東京地裁が保釈認める | |
3月4日 | 保釈金は5千万円を納付し、8カ月ぶりに保釈 | |
6月18日 | 河井克行被告に懲役3年実刑判決 | |
7月6日 | 被買収議員 全員不起訴 | |
9月22日 | 自民党本部 1億5千万円での買収否定 | |
10月21日 | 河井克行元法相 控訴取り下げ懲役3年確定 |
河井克行元法相が控訴を取り下げる意向を示したことにより、懲役3年などの東京地裁判決が確定することになります。
おととしの参議院選挙をめぐる大規模買収事件。河井夫妻が自民党から提供を受けた1億5千万円の使い道を書面で公開し買収には使われず「問題が無かった」と主張しました。
(自民党柴山幹事長代理)
「1億5千万からは買収資金を出していないという報告だったと受け止めています」
会見で自民党の柴山幹事長代理は1億5千万円の支出のほとんどは機関紙の発行や人件費などに使ったと説明し買収との関連を否定しました。
(自民党柴山幹事長代理)
「(1億5千万円の)政党助成金の多寡と買収をするしないは全く関係ないと思う」
去年11月に公開された河井夫妻の政治資金収支報告書では関連する団体の収支状況は「不明」と報告。
河井夫妻と党本部は「関係書類が押収されているため確認できない」としていました。
河井夫妻は22日収支報告書の訂正を県の選挙管理委員会などに提出したということです。
突然の記者会見、告知されたのは開始時刻の20分ほど前でした。
河井夫妻による大規模買収事件。現金を受け取ったとされる100人全員を不起訴としたことで波紋が広がっています。
東京地裁は18日、懲役3年の実刑判決を受けた河井克行被告の弁護人から受けた保釈請求を棄却しました。
河井被告の弁護人は、実刑判決を受けた後、即日控訴し、東京地裁に保釈請求していました。
金銭を受け取った議員に判決の受け止めを直撃しました。
河井案里被告 有罪判決の波紋
起訴から198日たった21日、判決は有罪判決でした。
おととし7月の参院選をめぐり公職選挙法違反の罪に問われた河井案里被告。
夫の克行被告と共謀し、県議4人と江田島市議1人に対し現金計170万円を渡し買収したとして検察側は懲役1年6カ月を求刑。
一方、弁護側は陣中見舞いや当選祝いだと無罪を主張し、渡したとされる現金の趣旨が最大の争点となりました。
判決で東京地裁の高橋康明裁判長は県議4人については「被告人の単独行為ではなく克行被告との共謀によるもの」と認定。
そのうえで「民主主義の根幹である選挙の公正を害する犯行であり供与額は多額に及ぶ」などとして懲役1年4カ月執行猶予5年の有罪判決を言い渡しました。
一方、克行被告の指示で案里被告の元公設秘書が渡したとされる江田島市議については「共謀が認められるに足りる立証はされてない」として無罪としました。
「行政の長として個別事件の裁判所の判断について所感を申し上げるべげきじゃない、このことは当然のことだと思っています。政治家はひとりひとり国民の負託を受けて、国民から疑念を抱かれないように襟を正して活動していくことが大事だとおもいます」
党本部から河井被告に1億5千万円が支出されたことについて、去年の総裁選で責任もって対応したいと言っていた再捜査について問われると「総裁になって報告受けてます。党で所定の手続きをへた上でルールに基づいて交付されているということでありました」
(Q再調査の必要ないと)「党で手続きをへて交付されたということでありました」
「大変厳しい判決が出たということは自民党に所属する人間としても広島にかかわる人間しても大変遺憾だと思っています。党から候補者にお金がいったことは法律に触れることではないと承知はしているが、党内の公平性の観点から問題視する向きもある、こういったことであると思っている選挙への姿勢ということで一石を投じた課題であったと考えています」
奥原信也県議「まだこれから控訴されて最後まで裁判は続くと思いますから、河井克行先生のこともあっていろいろと証人として出廷してやってますが、なかなかこのことに対してコメントすることは差し控えたいと思います。河井夫妻の裁判がすんで検察がどういう処分を出すのか、我々に対してそれをもってこれから判断していきたい」
「(Q受け取った金は違法だと判決でたが?)そのことについては私自身も反省を致しております」
2020年6月18日時点
1991年当選、順調に当選を重ね、2015年には総理補佐官、2019年には法務大臣に就任した克行氏。
一方、2001年に克行氏と結婚した案里氏は、2003年から広島県議としてキャリアを重ね、2019年の参院選では、自民分裂と言われた選挙を制し、参院議員に初当選。
順調に政治家としての歩みを進めていた2人に一体何があったのか。
河井克行・案里夫妻とは|初当選~大臣就任~辞任 夫婦の歩み[2020.6.18放送]
2019年7月 参院選の際の河井案里事務所の写真
2019年10月に、週刊誌がウグイス嬢への違法報酬疑惑を報じたのをきっかけに明るみに出た今回の事件。
2020年1月には元秘書ら3人が逮捕(1人釈放)。そして6月には河井議員夫妻も逮捕されることとなった。現職の国会議員夫妻の逮捕は憲政史上初めてで、全国に衝撃を与えた。
河井議員夫妻を逮捕[2020.6.18放送]
事件の舞台となった2019年の参議院議員選挙。案里氏の出馬によって自民分裂となった選挙戦。党本部からの莫大な資金提供、他の陣営には「まねができない選挙戦」・・・異例づくめの選挙戦で一体なにがおきていたのか。
疑惑の選挙戦|1.5億円~異例の選挙戦~当選~疑惑発覚[2020.6.18放送]
案里氏の秘書らの逮捕容疑は、ウグイス嬢への法定上限を超えた報酬の支払い。起訴された2人の裁判は控訴や上告を経て今も続いている。(2020年10月時点)
連座制による案里氏の失職がかかった秘書の裁判から見えたこと。
「あらいぐま」「アンジー」によるSNSの選挙活動のやりとり。
“河井ルール”とは・・・遊説スケジュールを誰がしきっていたのか。
秘書裁判でわかったこと|LINEのやり取りや証言で見える克行氏の関与[2020.6.18放送]
河井克行・案里夫妻の逮捕容疑は、選挙前に首長や地元議員らに現金を配布した公職選挙法違反(買収の疑い)。多い場合100万円を超える現金を配布。それ以上に世の中を驚かせたのが、100人規模となる現金の配布先。首長、議員のほか、支援者らにも配っていたことが、起訴状などから明らかになっている。
県議、広島市議の証言(ホームテレビの取材より)
現金手渡し・・・議員らの証言[2020.6.18放送]
裁判では、「習慣的なやりとり」として「寄附」という主張が認められるのか、「普段と異なる現金配布」とみなされ「買収」という判断が下されるのか。
2020年10月段階では、克行氏が弁護人を解任し、判決は2021年以降に下される見通しだ。
8月25日 | 河井夫婦の裁判 初公判 |
9月15日 | 克行被告が弁護人を解任 一時中断 |
9月16日 | 分離され案里被告だけの裁判が再開 |
11月4日 | 克行被告が新たに弁護人を選任 裁判が再開 |
12月以降 | 案里被告の裁判が結審見込み 克行被告の裁判は3月までの期日が発表(県議・秘書らの証人尋問を予定) |
案里被告 裁判でなに語った?(8月〜11月の裁判まとめ)
ホームテレビの取材では、起訴時に「100人の名前が記された現金配布リスト」の存在がわかっています。
記された議員・首長らへの取材をまとめました。
発覚後辞職
克行被告が自宅を訪れ
「保守系の票を上手に割れば自民党候補が2人通る」
といった話をした後の帰り際に封筒を。
選挙情勢について説明した後、「これを」と言って封筒を差し出した。「案里被告の当選に向けさらなる活動の要請だと思った」
黙っていれば自分の犯罪も公にならないと期待していた。
発覚後辞職
「何回も固辞したが(克行被告が)強引に」
150万円の授受認める
時期がくれば返そうと考えていた
辞意表明会見(全文)
発覚後辞職
「今の現状を打開するために私が退くことが一番ベスト」
2回にわたって60万を受け取ったことを認める
辞職表明会見(全文)
領収書などの処理について尋ねると、「これは表に出ないお金だから」と言われた。
現金200万円の受領認める。進退についての質問に・・・
「どうして?まだ(起訴など)なんもなってないじゃない」
「2人は何も言わずに白い封筒を置いていった」「領収書を求められなかったので表に出せない裏金だと思った」
「呉市を中心にまだまだ案里さんの名前は浸透していないので輪を広めて、票を集めていただきたいと 私を含めてそういうことだと思います」
「法整備が必要」
政治資金規正法が隠れ蓑。新たな法整備が必要。それがないと、これからどんどんこういう問題が出てくる
これまでに当選祝いの現金をもらったことはなく、「二階幹事長から」は「ブラックジョーク」だと感じたとする一方、票の取りまとめなど参院選への支援の意図を感じた。
「私も危ないと思って比較的早い返却につながっているので理解いただきたい」
「医療機関の基金に全額寄付した」
案里被告から統一地方選挙の最中に、妻への「お見舞い」などの名目で50万円を受け取るも、寄付したと話す。
案里被告は「自民党のもう一人の候補は現職で大丈夫ですから、私を応援してください」と述べた後「当選祝いです」と現金が入った封筒を渡してきた。
案里被告から封筒を受け取った際、「『領収書を書きましょう』と提案すると『いらなーい』と軽い甘えたような口調で断られた」
「克行被告から『いつものです』と」
3月と5月の2回。30万は「陣中見舞い」20万は「交付金」として受け取る
「詳しいことは公判で…」
「6月の中旬に克行被告から「当選祝いだ」と30万円を押し問答になるも受け取った。
今は返却しているが当時きっぱりと拒否していれば・・・」
「去年4月に克行被告が当選祝いだとして30万円を強引においていった」と裁判で証言。
また「案里被告に現金を返そうとしたが断られた」
「『いいからお祝いだから』4月20日に克行被告から現金を置かれ、外に出ていかれたので、そのままに」
「先生が力がある方というのは分かっていたので、これから豪雨災害の復興に向けて要望をお願いしたいというのがあるので、関係性を崩したくなかった」
「案里被告から強引に」
昨年の4月5日選挙中に私の身近な人が断ったにも関わらず案里被告から強引に30万円を渡された
「去年4月に私の妻が案里被告から現金30万円が入った封筒を渡された」去年12月に案里被告から電話があり「『平本さん、あれなかったことでいいよね』と言われた」「口裏合わせだと感じた」
「不在時に事務所に置いて帰られた」
家宅捜索を受け―公職選挙法に抵触は?
「一切しておりません」
車上運動員への違法報酬疑惑についての会見(全文)
知人の車上運動員を紹介した経緯、河井夫妻との関係性など
「(克行被告が)私の個人のお金で領収書も何もいりませんから」
選挙の前に陣中見舞いと50万円を。
さらに選挙後、当選祝いといって20万円置いて帰った。
「私は絶対に話するし皆さんの質問がなくなるまで全部お話しますからそれまでお待ちください」
去年3月下旬 選挙事務所に克行被告が来て「これ総理から」と30万円が入った封筒を。
6月には「これ気持ち」と20万円を。
「当選7回、首相補佐官を務めたベテラン議員の克行被告から渡されると返す選択肢がありません」
克行被告から「当選祝いだから受け取って」「案里のこともあるから」といわれ30万円を受け取り、その後、去年6月に20万円を受け取った。
裁判での証言を終えて
「河井先生は非常にプライド高いし面子傷つけちゃいけんと。
ケンカしてまでというような(現金の)返し方は僕にはできません。そこが一番の反省点です」
自身が裁判で有罪にならなければ任期中は議員を続けたいとしています。
「今は捜査を見守ってますので」
現金授受については「コメントできない」
「『家内をよろしく』などの言葉もあり案里被告の選挙の支援依頼だと思った」としたうえで、「機嫌を損ねると頼み事がしにくくなると思った」
「克行さんが来られたというのは事実」
説明責任とは「ある事実を曲げることなく皆さまにお伝えしていく このことに尽きる」
議会で議決されたことはしっかり受け止めて行動したい
「河井克行被告から平成31年の3月下旬に陣中見舞いとして30万円、そして6月の10日に当選祝いとして10万円(法廷では20万円と証言)を頂戴いたしました」
「どのような認識があったにしろ、私がお金を受け取ったこと、そして案里先生の選挙をお手伝いしたことは間違いありませんからそれについては責任が出てくることと思っています」
「(克行被告と)会ったら最後」
5月下旬に「当選おめでとう」と言い強引に封筒をねじ込まれる
断り続けるも「これは二人だけの秘密だからわかってるね」という形で結局は封筒を渡された
発覚後辞職
克行被告から「安倍総理から」という言葉をかけられ現金30万円の受け取りを認める
現金授受について「ノーコメント」
克行被告から「名刺代わりです」と現金20万円が入った封筒を渡された。
「案里被告の名刺だと思った」としたうえで、「違法な金だと思った」と話しました。
克行被告は国会議員で私は地方議員で気分を損ねれば陳情も難しくなるともしれないと思った。
「直感で現金だと思ったが現職の国会議員に『買収です』とはいえない」
発覚後辞職
授受という認識はない「置き逃げ」
(克行被告に対して)「頭にきた、お金で動かすということで屈辱的と感じた」
発覚後辞職
議長室で封筒を差し出された その後すぐに去っていった
「どういう状況であれだめだとやっておればこの事件は起きなかった 全て私が悪い」克行被告から現金を受け取った経緯など共同で会見(全文)
11月15日の市議選に再び出馬し当選
発覚後辞職
副議長室で封筒を差し出された「待ってください」というも立ち去った
克行被告から現金を受け取った経緯など共同で会見(全文)
「克行被告が机の上に白い封筒を置き『じゃあこれを』と言ったため『先生、これはいけません。ダメですよ』と答えると『いいから、いいから』と足早に立ち去った」
発覚後辞職
「ありがたい パチンコ代だと思った」「10万円全額パチンコ代に使った」と使い道についても供述。現金の意図については「票の取りまとめの報酬だと思った」
「カラオケ大会参加のお礼とも思いましたが、あまりにも額が大きいので私への投票へのとりまとめ、もしくは私の知り合いなどへの投票の依頼という趣旨もあるのかなと思った」
「初めは政治チラシや政治資金パーティー券と思った」と話し、「現金が入っているかもと思った」また、「下手に返すと角が立つと考え結果として議員活動や後援会活動に使った」
議員辞職の意向は?「全くありません」
「けじめをきちっととらせていただいてこれからできる限りのことを」議長辞職後に取材。
克行被告について「去年3月に私の自宅に来て『安倍総理からです』と20万円を置いていった」「買収の目的、危ない金だと思った」
克行被告から「お世話になります」と茶封筒を差し出され押し問答になるも最後は受け取った