広島ホームテレビ

NATO領域侵入で緊迫…ロシア・ベラルーシ合同軍事演習 前回は全面侵攻の布石に

国際

12日から始まったロシアとベラルーシの合同軍事演習『ザーパド』。日々、ウクライナに攻撃を続ける国と、その同盟国が、戦いに備えています。

『ザーパド』とは、ロシア語で『西方』のこと。
ベラルーシの西にあるポーランドは、演習を機に国境を封鎖しました。先週、ロシアのドローンが次々に侵入してきたことが、ポーランドの警戒感をより一層高めています。ドローンの侵入は、合計19回に及びました。ウクライナ国境をかすめたというレベルではなく、大半がベラルーシから入ってきたといいます。

加盟国に対する領空侵犯に、NATOも防衛強化を打ち出しました。
『東方哨戒作戦』。フランスやイギリスなどの戦闘機が防空に当たります。

NATO ルッテ事務総長(12日)
「ロシアの意図の有無に関わらず、NATO加盟国の領空を侵した。NATOとして、領土防衛の決意と、その能力を示す必要があります」

そんなタイミングで行われたロシアとベラルーシの合同演習。ヨーロッパが警戒するのは、不穏な前例があるからです。

ポーランド シコルスキ外相(12日)
「最大の脅威は、ロシアが演習を実戦に移してきたことです。ウクライナ侵攻を演習し、実行した。いまの訓練は、リトアニアが対象だが、ポーランドも狙われている。これは脅威です」

前回、この演習が行われたのは、4年前、2021年9月。20万人が参加する大規模なものでした。

演習が終われば、各部隊は本拠地に戻るとされていました。しかし、その5カ月後、一部の部隊は、基地に戻らないまま、両国は再び、合同演習を始めます。

そして、そのまま、ロシアは、いまに至るウクライナへの全面侵攻に踏み切りました。

ベラルーシは兵を送らなかったものの、ロシア軍が国境を越え、ウクライナへなだれ込んでいきました。

首都キーウを攻略しようと、近郊の空港の制圧にかかったロシア軍の空挺部隊。ホストメリ空港を占拠します。

のちにウクライナが奪還しましたが、ロシアにとっては、政権転覆の足掛かりとなるはずの作戦でした。

2021年9月に行われた合同演習では、ウクライナ侵攻を想定してか、空挺部隊の降下と、強襲作戦の訓練が展開されていました。

演習から実戦への流れが、また繰り返されるのではないか。
ヨーロッパでそんな懸念が高まるなか行われた合同演習には、各国の代表が招かれています。

この中に、サプライズのゲストがいました。アメリカ大使館の駐在武官です。

アメリカ駐在武官
「ご招待に感謝します」
ベラルーシ フレニン国防相
「お越しいただき、大変、うれしいです。我々は何も隠していません。根拠のない中傷を受けていますが、全部、お見せするつもりです」

ルカシェンコ大統領は、11日、アメリカのコール副特使と会談。トランプ大統領の要請を受け、外国人の政治犯を釈放し、引き換えに一部の制裁が解除されるなど、関係改善が進んでいます。

ヨーロッパが警戒を強めるなかでのアメリカ人将校の存在。双方の溝を、改めて感じさせるものとなっています。

ベラルーシ フレニン国防相(15日)
「我々がNATOを脅し、バルト三国を狙っているなどと言われています。それは、でたらめで、こうした情報戦を冷静に捉えています。隠すことはありません。自国の防衛に備えるだけです」