広島ホームテレビ

映画オッペンハイマー 被爆地広島で全国初の試写会 広島

広島

アカデミー賞で最多7部門を受賞した「オッペンハイマー」。

「原爆」の父として知られる物理学者を描いたこの映画を、広島の人たちはどのように見るのでしょうか。12日、広島市中区で試写会が行われました。

アメリカ映画界で最高の栄誉とされるアカデミー賞でノミネートされた13部門のうち、作品賞や監督賞など7部門で受賞した「オッペンハイマー」。

日本での公開に先立ち12日、広島市中区の八丁座で国内初の試写会が行われました。

招待されたのは県内の高校や大学に通う学生ら約110人です。

果たしてヒロシマを学んできた若者たちは、映画から何を読み取るのでしょうか。

映画の1シーン「創り出してもいいのかこのような兵器を」

クリストファー・ノーラン監督の「オッペンハイマー」は、第二次世界大戦中のアメリカで原爆の開発計画「マンハッタン計画」を指揮した、科学者のロバート・オッペンハイマーを題材にした映画です。

映画では「原爆の父」などとたたえられた栄光とともに、原爆投下とその惨状を知り苦悩を深めていくオッペンハイマーの半生が描かれています。

試写会後のトークイベントでは、元広島市長の平岡敬さんら3人が映画の中で「原爆被害の直接的な描写がないこと」について、それぞれの立場で意見を交わしました。

平岡敬元広島市長「この映画の描き方はアメリカ人の命を救うために(原爆は)使われたんだという結論に持っていきかねない筋立てになっていると思う。広島の立場からすれば、もっともっと核兵器の恐ろしさが描かれても良かったのではないかという気がする」

「オッペンハイマー」は、去年7月のアメリカ公開を皮切りに世界的な大ヒットを記録。

興行収入は公開から約2カ月で9億1200万ドルを超え、伝記映画としては「ボヘミアン・ラプソディ」などを抜いて歴代1位となりました。

その一方で唯一の戦争被爆国日本での公開は、半年以上が経過した今月29日から。

広島や長崎の被害状況などを伝えるシーンがなく、公開が一度見送りになったとする見方もありますが。

映画監督 森達也さん「僕は的外れだと思う。実際には見せていないけど、例えば広島長崎の現状を、科学者たちを集めて伝えるときにオッペンハイマーはずっと下を向いている。あのシーンだけでもいかに悲惨なのか、いかにむごいのか(が伝わる)。ではそこに広島長崎の映像を入れればいいのかといえばそんな問題じゃないと思う。そういう意味で成功した映画だと思っています」

アメリカ出身で広島市在住の詩人アーサーさんは、これが“原爆を作った側”アメリカ視点で見た現実なのではないかと考えます。

アメリカ出身広島市在住詩人アーサー・ビナードさん「僕らがオッペンハイマーになる。そうすると僕らがインサイダーになる、それがこの映画のすごさ。広島の人たちの体験、長崎の人たちの体験を外しているのは、映画で外しているのではなくてそもそもマンハッタン計画に関わっている選ばれしインサイダーたち、軍人も科学者もみんな広島を何とも思っていない」

映画で広島長崎の悲惨さが表現できているという意見の一方、もっと恐ろしさを伝えてほしいという声も。

若者たちはどう見たのでしょうか。

男子高校生「どのような過程で広島と長崎に原爆が落とされたかという今までにない視点から見て、でも結局(広島と長崎に)原爆が落とされたのは自分の中で間違いだと思って他の方法があったのではないかと感じました」

女子高校生「自分を飾り立てることが回りまわっていろんな人に辛い影響を与えてしまうことをなんで人間は考えられないのかな」

深く考える題材となりそうな「オッペンハイマー」。

今月29日から広島をはじめ全国の映画館で公開されます。