本来は冬眠しているはずのクマと向き合うマタギが感じた異変です。
■“穴撃ち猟”のマタギに密着
猟銃を構える、クマ撃ちの“マタギ”。その先で猟犬がけたたましく吠えています。
たどりついた場所の地面には穴が。よく見ると、中にクマがいます。冬眠中のクマを仕留める「穴撃ち猟」です。
“マタギ”と呼ばれる狩猟者たちは今年、冬眠するクマに“異変”を感じていました。
23日に番組が取材したのは、岩手県宮古市でマタギを23年続ける西村昭二さん(53)です。
クマ撃ちの“マタギ” 西村昭ニさん
「(Q.これは?)散弾銃」
西村さんたち“マタギ”は狩猟期間に山に入り、冬眠しているクマを狩っています。
西村昭ニさん
「個体数の管理をある程度していって狩猟するのが、我々マタギの中の共生だと思う」
冬眠中のクマをとらえた貴重な映像です。木にできた穴の中をライトで照らすと…穴の奥で身を隠すクマ。目が覚めたのか、人がいる方をじっと見ています。
クマは木の穴でも冬眠します。幹に登ったマタギが飛び降りた直後、木の上の穴からクマが出てきます。
冬眠中のクマは何かの刺激で目を覚まし、行動することがあるといいます。
西村昭ニさん
「餌(えさ)不足でその分、山の中のクマも痩せている」
西村さんの体にカメラを付けさせてもらい、クマ猟の様子を記録します。
猟犬を連れて、山の奥に進んでいきます。
西村昭ニさん
「あの穴見てくる。先に見て来るから待っていて」
地面にぽっかりと空いた穴を発見。銃を構えて近付きます。中にクマはいるのでしょうか…。
するとこの後、遠くから猟犬の鳴き声が。急な斜面を駆け上がり、急いで向かいます。
猟犬が吠える先に地面の穴が。この中にクマが1頭潜んでいます。
犬の鳴き声で冬眠から目覚めたようです。襲われる恐れがあるため、すぐに発砲。1発でクマを仕留めました。
■冬眠するクマにも“異変”が
クマと向き合うマタギの西村さんが今、懸念しているのが市街地に現れる「アーバンベア」です。
西村昭ニさん
「アーバンベアに関しては、家が見えるところで冬眠していると思っている。人間側からするとアーバンベアと共生はできない」
26日も、市街地でクマによる被害が出ています。
秋田市の大森山動物園の駐車場で50代の男性職員がクマに右肩をかまれ、けがをしました。
26日午後、秋田県の鈴木知事は、小泉防衛大臣と面会しました。
秋田県 鈴木知事
「本当に限界を迎えていた有害捕獲の現場において、救世主が来たと皆さん喜んでいただいた」
クマの被害が相次いだ秋田県では先月、自衛隊がクマ捕獲の後方支援に入っていました。延べ924人の隊員が重たい箱わなや、駆除したクマの運搬などを行ったといいます。
小泉防衛大臣
「当初の目的も達成できて、非常に良かったと思っている」
マタギの西村さんに今後、必要なクマ対策を聞きました。
西村昭ニさん
「山に餌がなかったら餌場になる山を作ればいいが、個人・自治体でできるレベルではない。国が率先して政策をうちだしていかないと厳しい。動物の生息できる森林を復活させないと、共生というよりは、すみ分けができないと思っている」