給付と消費税の減税が参議院選挙の争点となるなか、東京債券市場で長期金利が17年ぶりの高さになっています。マーケットが財政悪化への懸念を示した格好です。
■給付と減税…どちらが効果的?
急激な右肩上がりになっているグラフ。長期金利の代表的な指標、10年物国債の利回りのグラフです。15日には一時1.595%に上昇し、2008年のリーマン・ショック以来の高い水準になりました。
一因になっているのは、参議院選挙で各党が争点にする「物価高対策」です。
与党が1人当たり2万円の給付を打ち出していることに加え、野党は消費税率の引き下げや撤廃などを主張しています。
野村総合研究所の木内登英氏の試算では、1人2万円給付の場合は、およそ3.2兆円。食料品の消費税をゼロにした場合は、およそ5兆円。消費税を一律5%に引き下げた場合は、およそ12兆円。消費税を撤廃した場合は、およそ24兆円。それぞれの案で、財源が毎年必要となっています。
市場は参議院選挙の結果次第では、赤字国債の発行は免れないと見越して日本国債を手放し、その結果、国債の金利が急上昇しました。
経済学者の間でも、給付と減税どちらが効果的かは意見が分かれます。
条件付き給付〇 減税×
龍谷大学名誉教授 竹中正治氏
「物価高で家計が苦しいから消費税率を下げるのは、私は論外だと思っている。コメ問題しかり、供給制約で物価上昇なのに減税で需要刺激したら、ますます物価上昇するじゃないかと。中よりも下の所得層に対する給付金のほうが理にかなっている」
給付より減税のほうが効果的だと指摘する専門家もいます。
給付× 条件付き減税〇
上武大学教授 田中秀臣氏
「今、日本経済というのは消費が低迷している。給付金政策は一部分しか消費に回らないので効果が乏しい。消費減税をやるなら、ずっと消費減税2%ぐらいがベスト」
どちらにしても財源を手当てできなければ、金融市場に影響が出る可能性もあります。
給付× 減税×
東京財団シニア政策オフィサー 森信茂樹氏
「国債発行につながるような公約政策を実行すれば、これは本当に大きなショックになると思いますよ。トラスというイギリスの首相が財源なき減税を言ったのですが、起きたことはトリプル安(通貨安 債券安 株安)」
2022年にイギリスの首相に就任したトラス氏は、財源なき減税政策の失敗でわずか2カ月弱というイギリスの憲政史上最短の政権となりました。
長期金利が上がると、私たちの生活にどのような影響を与えるのでしょうか?
森信氏
「金利が上がれば、まず一番に起きるのは国債の格付けが下がる。(そうすると)民間の資金調達コストがみんな上がる。住宅ローンの金利にも影響を及ぼす(上がる)」
竹中氏は、国内の住宅ローンを含めたローン残高はおよそ380兆円で預貯金はおよそ1000兆円とローン残高の2倍以上のため、金利の上昇幅を考慮しても日本の家計全体ではメリットがあるといいます。
田中氏は、現状の経済状況では金利上昇によって負担が増え、消費が落ち込む悪循環になると警告します。
(「グッド!モーニング」2025年7月18日放送分より)