10月にプロスケーター生活にピリオドを打つ町田樹さん。
広島出身の彼が、地元で最後となる演目「ボレロ」を披露してくれました。
番組では、広島出身として世界で活躍してこられた町田さんに敬意を払い、広島で見納めとなる8分間にも及ぶ大作「ボレロ」をノーカットで放送いたしました。
また、この世界観をより深く知っていただくために、町田さん御本人に解説もしていただきました。
しかし、放送にあたり、一部解説がお聞き苦しいシーンもございました。
そこで、解説部分に付きまして、改めて町田さんがどのように語られていたのかを文字にいたしました。少しでも作品の理解を深める上での一助になればと思います。
(時間は、ボレロ開始からのおおよその目安です。)

 

実況:大重麻衣アナウンサー 解説:町田樹さん

 

00:18

大重 深い霧に包まれた森の夜明け。凍った湖の畔に、1人の男が佇んでいます。名曲ボレロ。
町田 フィギュアスケートの魔力に取り憑かれた1人の男の姿を描いている作品になっています。フィギュアスケートのルーツが、コンパルソリーフィギュアと言って、氷の上に図形を描く競技だったんですけど、この冒頭の部分はそこからインスピレーションを得て、幾何学模様を描いていく振り付けになっています。
ですから皆さんには、この男がどのような図形を描いているのかということを想像しながら見ていっていただきたいと思います。

 

01:44

大重 このボレロでは、照明はどのような表現をしているんですか?
町田 森の夜明けから日の出までを照明の力で演出しました。音楽の高まりとともに日の出が訪れるのですけど、そうした情景がどのように照明で描かれていくのかということにご注目下さい。

 

02:24

町田 また、照明によって生まれる影にも注目していただきたいのですが、今は1つの影ですけど、照明が増えていくと同時にどんどん影も増えていきますので、こうした神秘的な側面にも着目していただきたいです。

 

02:48

大重 徐々に音楽とともに踊り方も強くなってきましたね。
町田 そうですね。このボレロという音楽は同じメロディの繰り返しなんですけど、どんどん楽器が増えて華やかにそして激しさを増していくんですよね。そうした音楽の高まりとともに身体運動も激しさを増していきますし、照明もどんどん明るさを増していきます。

 

03:54

大重 衣装にこだわりもあるのですか?
町田 そうですね。基本的にシンプルな衣装で構成してみました。私の肉体そのものが衣装だと考えています。ただしアクセントとして、腰にサッシュベルトを巻いていますが、このボレロではグリーンのベルトと赤いベルトを2本用意しています。赤いほうがモーリス・ベジャールのボレロへのオマージュになっていまして、グリーンのほうが我々のボレロ作品の情景である深い森と凍った湖を表しています。

 

04:50

大重 このボレロという楽曲は、バレエを始め色んなジャンルで演じられてきていますが、町田さんのスケートで表すボレロはどのような部分に一番こだわりましたか?
町田 そうですね。8分間のボレロなんですけれども、その8分間で私の全エネルギー・体力を全て消耗しきれるような振り付けを心がけました。この男、実はこの先「死」が待っているんですけど、そうした作品を描くときに終演後に私の体力が残っていたら説得力がありませんから、この男が全生命力を使い果たして死に向かったように、私の体力も全てこの作品に捧げるように使い切るというのが、この作品を制作する上で心がけたポイントになります。

 

06:33

町田 このシーンに至ると男はもうトランス状態に入って、踊り狂うという状態に入ります。
大重 もうじゃあ止められない状態?
町田 そうですね。

 

07:16

大重 徐々に陽の光が差し込んできました。
町田 このシーンに至ると、陽の光が強烈に差し込んできて、氷を溶かし始めます。

 

08:00

大重 町田さんが広島に思いを馳せた集大成の最後のボレロ。演じきりました。
町田 最後、陽の光で溶けた氷が割れて男は湖の底に沈んでいってしまいます。肉体は「死」ということで滅びるんですけど、男の精神は踊りによって昇華されるということになります。