広島ホームテレビ

西日本豪雨5年 沼田川氾濫をきっかけに消防士に 三原市

広島防災・災害

三原市を流れる沼田川の氾濫で実家が被災したことをきっかけに消防士を目指した男性がいます。災害に備える毎日を取材しました。

吉口大貴さん「一帯が水で浸かっとったんでこんなきれいな状況じゃなかったですね」

この場所を見渡した時に浮かぶのは、5年前に見た光景…三原消防署で働く吉口大貴さんさん(25)です。

5年前のあの日、3日間で400mmを越えるほどの雨は川の水量を増やし、6日の夜には沼田川がはん濫、支流の堤防が崩れ泥水が住宅へと押し寄せました。

吉口大貴さん「菅川があっちにあって、その水が流れてきて、この辺も浸かって僕の実家のほうも水が流れてきて床上のほうまでいったんで」

沼田川と菅川のはん濫により本郷町船木では50代から90代の3人が死亡。本郷町全体で1200棟以上の住宅が浸水被害を受けました。

実家を離れ広島市で働いていた吉口さんは、急きょ地元に戻りました。

吉口大貴さん「濁った水でもう全体が川になったという感じですかね」

実家や知り合いの住宅の片づけをしていくなかで、心に留まったのが「消防士の活躍」でした。

吉口大貴さん「自分の力じゃ何もできないと感じて、友人から消防士の人にボートで助けてもらったという話を聞いて、私も消防士として住人の方や大切な友人・家族の命を守りたいと思ったのがきっかけですね」

かつて消防士を目指していました。被災した地元を目の当たりにし、再びその思いが沸き上がったのです。再び勉強を始め、数カ月後の試験に合格。翌年の春には晴れて消防士となりました。

当時、救助や救急、消防隊の垣根を越えて対応に当たった三原市消防本部。吉口さんが再び消防士を志すきっかけとなった隊員がいます。

三原消防署 田原昌記さん「船木という地区なんですけど、そこにまだ取り残された人が多数いるということで、我々がボートでいって救出した」

自宅も浸水被害を受けるなか、丸3日間、救助にあたりました。

三原消防署 田原昌記さん「もう限界でしたね。3日目の晩に家に帰ったんです。夜だったんで子どもの寝顔を見たら安心しました」

あの災害から5年。組織全体で災害対応にあたった三原市消防本部にも若い隊員が増えました。

三原消防署 田原昌記さん「知識の継承ですね。こういうことがあったんで、みんな気を引き締めて頑張ってほしいということとそれを踏まえた訓練をして災害に対応できるような形をとりたい」

助ける側の消防士への夢をかなえた吉口さんも、日々出動に備えています。

三原消防署 吉口大貴さん「当時は信じられなかったですけど、それがきっかけで消防士に絶対になろうていう思いもあって、今こうして働けているんで、自分が経験したからこそ怖さとか不安な気持ちが理解できるんで、住民の方に寄り添って安心してもらえるようにそんな一言をかけられるようにしていけたらと思います」