ウィーンの元旦はニューイヤーコンサートで新年のあいさつ
元旦を彩るウィーンフィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートは、音響効果がすばらしいウィーン楽友協会の黄金のホールで開かれます。毎年テレビで日本をはじめ世界中に中継されますのでご存知の方も多いでしょう。
毎年、ヨハン・シュトラウス、ファミリーの曲を中心に演奏されますが、その年によってシュトラウス以外の曲も演奏されます。
恒例となっているコンサートの最初の曲はヨハン・シュトラウス二世の「美しき青きドナウ」です。その曲が始まって少しすると、中断し、指揮者をはじめオーケストラメンバー全員が一斉に「Prosit Neujahr・ハッピーニューイヤー」といって観客やテレビを見ている全世界の人々に新年のあいさつをします。
再び「美しき青木ドナウ」の演奏に戻り、演奏にあわせて、今年は国立オペラ座専属のバレエ団のバレエも披露されました。そして、画家グスタフ・クリムト生誕150周年を記念してベルベデーレ宮殿の大理石の間でバレエが行われました。
今回の指揮者は、2006年にも式台に立ったラトビア出身のマリス・ヤンソンスさんです。その時はモーツァルト生誕250周年に合わせてモーツァルトの曲も演奏されました。
今回は、久々のウィーン少年合唱団との共演もあり、「トリッチ・トラッチ・ポルカ」など天使の歌声に合った活気のある演奏が披露されました。
また、ヨゼフ・シュトラウスの「鍛冶屋のポルカ」ではヤンソンスさんが自らが金づちをたたく名演技を見せ、会場を沸かせました。特に心ひかれたのは、チャイコフスキーのバレエ曲「眠れる森の美女」など例年と一味違った演目もあり、感動の連続でした。
コンサートの最後を飾る曲は高齢のヨハン・ストラウス1世の「ラデツキー行進曲」が演奏され、観客も手拍子で参加し会場は大きな拍手と喝さいに包まれました。
しかし、このニューイヤーコンサートと、まったく同じプログラムの演奏会が、ほかに2回あることは意外に知られていません。12月30日の「プレビュー・コンサート」と、大晦日の「ジルベスター・コンサート」です。
この3日間のコンサートはインターネットで申し込んで、当選したら購入できます。チケット料金は20〜940ユーロ(約2千円〜9まん千円)と幅があります。世界中から何万、いや何十万と応募が殺到しますが、当選するのはわずかそれぞれ約2千人です。当選は奇跡としか言いようがありません。
長年ウィーンに住み、ぜひ一度聴きに行きたいと思っていましたが、今回ビッグチャンスが訪れました。
大晦日のチケットを持っていた友人が急用で行けなくなり、私が譲り受けたのです。
私も楽友協会のこの黄金のホールで第九を歌ったり、何度も演奏会を聴いたりしていますが、このニューイヤー・コンサートはやはり一味違い特別な雰囲気です。美しい花々で飾られ、まぶしいほどの照明に照らされたホールは、文字通り黄金色に輝いて見えました。
1939年12月31日に初めてクレイメンス・クラウスの指揮で始まったこのコンサート。歴代指揮者が演奏曲目を振り返ってみると、それぞれの時代の世相が反映され懐かしくよみがえってきます。
今回の感動が冷めないうちに私はさっそく、インターネットで次回のチケットを申し込みました。もしかするとまた奇跡的にチケットが手に入り、再び聴きに行けるかもしれないと、大きな希望を込めて・・・申し込みました。皆さんも来年はぜひ挑戦してみてはいかがですか?
インターネットでの申し込みは:http://www.wienerphilharmoniker.at/
です。チケット購入の抽選について日本語の説明があります。
ウィーン在住 イップ常子
イップ 常子
1949年、広島市生まれ。ウィーン在住37年 広島オーストリア協会会員
1973年に勤務先の広島大学理学部を退職し、同年10月にウィーン大へ留学。
74年に結婚し3児の母に。子どもたちの成長後、主婦業からガイドへ挑戦。
2001年オーストリア公認国家ガイド資格取得。
主にオーストリア国内をはじめチェコ、ハンガリー、スロバキアなどの近隣国への日本人観光客の観光案内・通訳に従事。
2009年9月 、ウィーン市内に建立された被爆石による「平和モニュメント」
実現のため現地の窓口として尽力。