第547回
開催日:2025年6月24日(火)
【課題】
『ドキュメント広島「牛とJK ~双子が挑む“和牛甲子園”への道~」』
『ドキュメント広島「牛とJK ~双子が挑む“和牛甲子園”への道~」』
(2025/4/19放送)
出席委員(敬称略):
小川富之、大井美恵子、井筒智彦、稲田信司、奥田亜利沙、喜多村祐輔、木村文子、東山浩幸
合評での意見
【総合批評】
- キラキラした青春物語、ヒューマンストーリー。一つの番組としては成功している
- 女子高生のコメントで「かわいいだけではなくて、おいしくなるためにどうすればいいのか」といったくだりがあった。あんなにかわいく牛に接している子も、どこかプロ意識が高校時代から芽生えていて、それを業としてやっていく覚悟が言葉の中に出ている。あの言葉は非常に印象に残っており、農業高校での教育の質の高さが伝わってくる一場面として受け止めた
- 取組評価と枝肉評価という二つの部門で優秀賞に選ばれたということだが、どこがどう評価されて、ほかの学校と比べてどこが評価されなかったのか。その部分の解説が分かりにくかった。全国トップになった理由についての解説がもっと欲しかったです。
【批評ポイント】
1. ふたりの高校生を通じて農業高校での畜産の学びを知ることができたか
- 鼻にリングを付けるシーンや採卵するシーン、甲子園に向けて準備する段階でビタミンの量を量ったり、餌を自分たちで作ったりするところなどから、学びを知ることができ、その雰囲気はすごく伝わった
- 畜産の教育現場は人の感情がこもった温かい場所であることが伝わってきて良かった
- 生産や飼育をする実際の映像もあってすごく分かりやすく描かれていた。半年飼育して涙するシーンはとても感動的。
- 国語や数学など普通の高校と同じ勉学もしながら生産や飼育に関わるところが農業高校の畜産科ならでは。どんなカリキュラムで学んでいるのかという説明があれば良かった。若い世代の方が興味を持つ一つの指標になると感じる。
2. 後継者不足と言われる県内の畜産業界の現状が伝えられたか
- 肝心な畜産農家さん、現場でやっている人たちの声をもっと聞きたかった
- 専門家からの畜産における構造的な俯瞰したような話があっても良かったのではないか
- 広島県内で肉牛の農家が5分の1になったことだけを伝えたのでは、すごく農家が減っているというミスリードになるのではないか。人手不足の解像度をもう少し上げて伝えれば、ハッピーな青春物語だけではなく、畜産の現状や課題についても学びがある番組になったのではないか
- 和牛専攻でも高校卒業とともに畜産から離れる方もいるということだが、そうであればその理由は何なのか。そこを深掘りすると、では畜産に関わってくれる人を増やすためにはこういう取り組みが必要だという話につなげられるのではないか
- 畜産技術センターに農業高校から入る人は少ない、希望者がいないという趣旨が分からなかった。農業高校に行ったけれども畜産技術センターに魅力を感じないのか、センターとしては来てほしいと思っていないのか。せっかく畜産技術センターの方に聞かれているのであれば、もう少し分かりやすい回答をもらえたら良かった
- 番組だけを見たら、いい青春ドラマだったと見えるので、そちらで押し切ってほしかった。畜産業界の現状を伝えるのであれば違う作り方になっていると思うので、その趣旨で突っ走っていけば良かった
- この二人を純粋に追いかけて番組を作ったことで、こういういい番組が出来上がった。この番組を見てこうなってもらいたいということをたくさん入れ込むより、この二人に絞ったことで関心を持ってもらえたし、一貫した流れがあるので非常に良かった。結果として、これを見た人の中には、畜産業界の現状を知ってやってみようというモチベーションを持つ人が間違いなく出てくると思う
以上