広島ホームテレビ

放送番組審議会

第546回

開催日:2025年5月27日(火)
【課題】
『ろうの世界に“音”を!~ CODA 俳優として生きる~』
(2025/4/12放送)
出席委員(敬称略):

小川富之、大井美恵子、井筒智彦、稲田信司、奥田亜利沙、喜多村祐輔、木村文子、東山浩幸

 

合評での意見

【総合批評】

  • 吉富さくらさんがCODAとしての葛藤を抱えながら夢に向かって頑張っている姿があり、周りの支えと家族の深い愛情も描かれていた
  • 番組を見ながらCODAについての理解が深まり、前向きに何かしら応援したい気持ちになるようないい番組だった
  • ろうの世界があって自分はCODAという立場という中でも、自分としては元気に明るく生きていくのだというメッセージが伝わった
  • CODAやSODAという言葉は知らなかったので、番組を通して学ぶこともあった。、もっと概要説明があればさらに学びを得ることができただろう
  • 俳優を取り上げることで見やすく、よりアプローチしやすい存在として捉えられた。番組を見終わった後も、前向きな形で、ろうの問題を我が事として捉えられるような印象を受けた。とても良質なヒューマンストーリーになっていた
  • 「テレメンタリー」などはニッチなテーマを扱うケースが多いため、いろいろなデータや解説を厚めに出してほしい。そのテーマについて詳しくない人は、少し聞き逃すと全然分からなくなりかねず、そういった構成上の工夫をしてほしい
  • 情報保障という言葉はあまり聞き慣れない考え方。基本的な人権としての情報の在り方は、ダイバーシティー(多様性)の観点から重要だという点と、もう一つはフェイクな情報がまかり通っている中でいかに正確な情報を伝えるかという二つの側面があると思う。そのようなこともさらに考えさせるような次なる番組を待ちたい

 
【批評ポイント】

1. 「聞こえない家族を持つ人」や研究者とのやりとりを通して、さくらんの葛藤が「一般的なCODAの悩み」として昇華できていたか

  • CODAの人たちは聞こえる人と聞こえない人の狭間にいるからこそ生じる悩みがあるというのはすごくよく伝わった
  • さくらさんが同じ境遇の人と会話するシーンは、さくらさん自身も心の整理がつき、視聴者にもCODAの一般的な悩み、さくらさん個人の悩みについてもより伝わる。そのシーンを見て興味を持つことができた。そのため、一般的なCODAの悩みは、友達との会話や実際の話、また研究者のデータという面があることにより、深みを増した
  • 社会の課題をもう少し整理して丁寧に伝えてもらってもよかった
  • 一般的なCODAの悩みに着目するのであれば、もう少し座談会を聞いてみたかった。もう少し違う観点からの悩みが聞けたら、一般的な悩みはこんなものもあるのだと想像を巡らせることができた

2. CODA俳優として活動するさくらさんの姿を通して、単にCODAという存在を広めるだけではなく、人知れず悩みを抱えている現状や、乗り越えるべき課題を描いた作品になっていたか

  • さくらさんが言った「(俳優として出て批判された)作品が終わっても私の世界はまだまだ続く。ろう者の世界にも入るし」というコメントはすごく刺さった。他の人には分かってもらえないという本音もこぼしていた。視聴者としては、CODAについて知ることがすごく大切だと思った時に、さくらさんの本音を引き出した素晴らしい作品。すごく学びの多い番組だった
  • さくらさんの悩みの一つにあったSNSで批判コメントを受けたというシーン。スマホの画面が全部モザイクだった。プライバシーの問題があるなら、意訳したもの、どんな雰囲気の言葉が書かれていたのかは見せてほしかった
  • 「乗り越えるべき課題」は、具体的にどういうものがあるのか提示してほしかった。どこに改善の余地があるのか、私たちができるアクションの可能性がどこにあり得るのかというのも示してくれるとよかった
  • さくらさんが直面している理不尽な批判に遭うという課題は、CODA特有のものなのか、障害をお持ちの方一般的に通じているものなのか。ざっくりとした批判なのか、音が聞こえない方との間に立っている者だからこその悩みなのかというのは若干伝わりにくかった

以上