広島ホームテレビ

放送番組審議会

第529回

開催日:2023年9月12日(火)
【課題】
ドキュメント広島 原爆資料館 閉ざされた40分~検証 G7広島サミット~ (2023/8/4放送)
出席委員(敬称略):

小川富之、河合直人、井筒智彦、大井美恵子、喜多村祐輔、木村文子、武井三聡子、東山浩幸

 

合評での意見

【総合批評】

  • 本当にしっかり密着していた。本音のような言葉というか、結構、自然な言葉が拾えていて、やはりそういう言葉は染み込んでくるところがある。
  • 小倉桂子さんのサミット前後での変化も捉えられていて「(核廃絶への道が)いかに難しいか、そのために頑張ったか。いかにお互いものを知らないかというのを感じました」という言葉が、被爆者として長年実情を伝えてきた小倉さんの言葉で、自分の予想とは違って意外でもあったからこそ、凄く響いた。
  • 各国首脳たちが実際に何を見たのか知りたいと思いながら見ていたので、それに迫っていく様が感じられたのは納得感があった。
  • 資料館を訪れた各国のリーダーや閣僚級、昔の方も含めて、色々なリーダーたちの気持ちが変化しているのが見られたのがよかった。
  • 首脳であったり、被爆者であったり、外国のメディアの方であったり、色々な方の立場でこうだったんだという、我々の知らない情報を伝えてもらい、引き締まった内容に肉がしっかり詰まっていた。
  • 開催地の広島が今回のG7サミットをどう見たかというのが、非常に的確に分析されている番組づくりになっていた。
  • 政府側の苦労、もしかして本館視察も画策していたけれども、あまりプッシュすると訪問自体がゼロになってしまうリスクがあったのか、配慮・忖度が働いたのかなど、政府関係者やもう少し中立的な立場の方の見解でもいいので、何か政府側の苦労も知りたかった。
  • 将来何かの形で、この閉ざされた意味がもっと明らかになるのか、少しずつでも核廃絶に向かっていくことができるのかということを非常に考えさせられた良い番組だった。

【批評ポイント】
1. 「政府としての考えや思惑」と「地元広島としての思い」の間のズレなどが伝わったか

  • 首脳たちに伝わっていない部分や、地元広島の被爆者の思いと政府の考えのギャップというものを凄く感じることができた。
  • 被爆者の思いやG7に対する期待の大きさは、被爆していない広島県民とは、また違った強い思いがあると感じることができた。被爆者の生の声があることによって、閉ざされた時間に落胆する部分で、思いのズレが非常に分かりやすかった。
  • ズレが凄くよく伝わった。広島としての思いと政府としての考えや思惑には非常に大きなズレがあると思ったが、どちらも努力しての結果であり、その実態をこちらがいい、悪いと言っていない面がよい。見る人によってみんな答えが違うと感じた。
  • 被爆者を代表するサーロー節子さんの「失敗だった」という言葉から、実相を見て核廃絶に変わるという悲願が落胆に変わったというところで思いのズレが上手く伝わった。
  • ズレはないと感じた。被爆者の一部に落胆があったというのもピンとこない。小倉さんは「夢がかなった」という言葉があったし、最後は政府の立場を理解されたようなコメントを言われたように受け取った。
  • 地元広島の思い、特に被爆者の思いというのはよく分からなかったところがある。サミットに何を期待しているのかという点。まさかサミットで、各国首脳が核廃絶をしましょうという宣言をするわけはない。被爆者として資料館をじっくり見てもらいたいということに過ぎなかったのかどうかというのが分からないところ。
  • 政府側の思いと被爆者の思いのズレ、考え方の違いというのは論点が違う気がする。被爆者の思いは「核廃絶」で、そこは政府も各国も否定していない。そうすると、核廃絶についてどういうステップを踏んでいくのかというところの違いだが、それはこれまでずっとあった。それが、この原爆資料館の40分の話になると問題が矮小化していた。なぜ40分を隠す必要があるのか、核廃絶という正しいことを主張するのに何を遠慮する必要があるのかを伝えたかったのだと思うが、最後のほうに至るにつれ、どうして時間が短かったのだろう、もっと沢山見れば良かったのになどという話になり、取材の目的とは違って小さい方にいってしまったという感じを受けた。

2. 普段の原爆資料館を知らない人やG7サミットに対する前提知識を持たない人などにも、「閉ざされた40分」の意味することがわかる内容だったか

  • G7サミットに対する前提の知識を持たない人や、原爆資料館に今まで足を運んだことがない人にとっても、被爆した時の悲惨さを物語る三輪車や洋服、その展示の仕方まで前回の館長さんがお話をされており、非常にいい内容が沢山盛り込まれていた。
  • 実際、どのように視察されたのか、展示室はどうなったのかを志賀前館長が検証し、映像で紹介しながら、今回のスタッフの心中も「腹立たしかったのではないか」という言葉があったり、「本館を訪れていないと原爆の悲惨さは伝わっていないでしょう」とか、そういった思いも含めて原爆資料館の様子が上手く伝わっていた。

以上