広島ホームテレビ

放送番組審議会

第497回

開催日:2020年6月16日(火)
場 所:広島ホームテレビ特別会議室
【課題番組】
ドキュメント広島
私は何者なのか 〜原爆で孤児となって〜
番組について

「田中正夫」さん(79)。4歳のとき被爆し、家族を失った。育ったのは「広島戦災児育成所」。田中正夫という名前は、育成所でつけられたとみられる。
原爆で親を奪われた「原爆孤児」は、2000人いたとも6500人いたともいわれる。育成所は被爆から3カ月後、孤児たちの様子に心を痛めた僧侶の山下義信氏によって創設されたものだ。200点以上に及ぶ「山下資料」と育成所で育った孤児の証言から見えてきた。
“本当の自分”を知りたい、家族に会いたい…田中さんの思いは今も変わらない。被爆から74年、あらためて自分のルーツを捜し始めた田中さんに広島ホームテレビは春から協力を続けてきた。
夏の放送ではルーツに辿り着くことはできなかったが、12月、高校生に証言をする機会が訪れた。彼らは田中さんの被爆体験を紙芝居にするという。家族につながる可能性を信じて、過酷な運命を伝え残す―

 

出席委員:

前川功一委員長、小川富之副委員長、大井美恵子委員、河合直人委員、藤本慎介委員、前田昭委員、見延典子委員、山平慎一郎委員

 

合評での意見
  • 取材対象者の中には、重い口を開いてくれた人もいて見応えがあった。結局、最後まで自分のルーツの手掛かりとなる人は見つからず、被爆70数年の重みを感じた。
  • 田中さんは大変なものを失っているのに、淡々とした表情が逆に胸を打たれた。
  • 広島市の平和記念式典の小学生による平和への誓いの映像で「被爆者の魂の叫びを世界中に伝えたい」という言葉があったが、それは田中さんの言葉のように聞こえた。
  • 全体を通して胸に突き刺さる言葉がいくつかあった。田中さんにとって、明日を生きることがどれだけ辛かったかを知らされた。
  • 自分が何者なのか?と自分探しをする田中さんが中心の構成ではあるが、より広く「原爆孤児」と言われる方々の悲惨さが伝わる幅広いテーマの番組に仕上がっていた。
  • ドキュメンタリー番組として視聴すると、消化不良を起こしてしまう内容だった。田中さんが訪ねる人からはほとんど情報を得られず、「もう少し事前に調べてから訪れたらよかった」と思った。田中さんが痛々しく、辛い思いがした。
  • ナレーションで「失われた人生」という言葉が何回か出てきた。しかし、孤児の人にとっては、人生は激変していても失われてはいない。苦労はしているが、たくましく、立派に生きている印象を受けた。