広島ホームテレビ

吉弘 翔の It's show time

さまざまな“制限”と戦う高校野球界

 

 夏のような強い日差しの中で行われた高校野球・秋の広島県大会は、広島商業の24年ぶりとなる優勝で幕を閉じた。広島ホームテレビでは初めて秋季大会のライブ配信を実施。コロナ禍で普及したオンラインを活用し、今後さらに高校球児の姿を県内外にお届けできるのではないかと考えている。

 

 

 昨今の社会状況は、高校野球にも変化を生じさせている。ある高校の関係者は、「とにかく限られることが多い」と話す。何より制限を受けたのが“練習時間”だ。前出の関係者は言う。「取捨選択をすることが増えた。切り捨てるところは切り捨てるようにしている」。今後は制限された時間の中で、いかに効率よく結果に結びつけられるかが求められそうだ。時間の規制が撤廃されたあとも、短時間で練習する高校が増えるかもしれない。コロナをきっかけに高校野球界、ひいては野球の世界で短時間の練習が主流になっていく可能性もある。

 

 

 近年の高校野球で議論されることが増えた制限が他にもある。“球数制限”だ。今大会は「一週間500球以内の投球制限を実施する」と要項に記されていた。球数制限に対応するため多くのチームが複数人の投手を起用。私が使用していた実況資料は投手のデータ欄を5人分に設定していたのだが、今回は6人起用している高校もあり実況資料のフォーマットを変更した。複数投手を擁する高校は今後も増えていくだろう。

 

 

 そんな中、3位決定戦で先発した広陵高校の背番号20番・森山陽一朗投手は、143球の熱投で完投勝利を飾った。中井哲之監督が完投させた意図を教えてくれた。「初めて公式戦のメンバーに入って初完投。完投がどれだけしんどいか分かっただろう。完投したらどんな考えを持つのかなと思って。球も強くなってきたし今後が楽しみ」。継投が主流になっても完投できる試合があれば1人の投手に任せる試合もあるはずだ。

 

 

 監督の期待に応えた森山投手はさらなるレベルアップを図る。課題と考えている制球力を向上させるために独自の練習を行っていることを明かしてくれた。「ストライク率をあげるために球種と投球数を決めて60~70%の確率でストライクが取れるようにしています」。今大会ではこの練習の成果を発揮できたと手応えを口にし、「今後は少しでも良い背番号をもらえるようにアピールしたい」と意気込みを語った。コントロールが良くなれば球数を減らすことにもつながるはずだ。

 

 

 “制限”と聞くとネガティブな印象を抱くことも多いが、限られた環境から新たな発見が生まれたり進化する技術があったりするのだろう。10年後の高校野球がどのように変化しているのか。これからも推移を取材していきたい。