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第39話 「人生クイズ」

人は、ある時、ある瞬間、何らかの「答え」を出さなければならない局面に遭遇する。
それは、好むと好まざるに関わらず、何の前触れもなく突然訪れるものもあれば、長い時間を掛け、相当の準備をもって迎え入れるものもある。
そんな、人々が全精力を注いで答えを出す「質問」のことを、僕はこう呼んでいる。

「人生クイズ」

人生の様々な状況において出題されるこの「人生クイズ」に、僕たちは翻弄される。
なぜなら、その「質問」により、僕たちは人生の岐路に立たされ、その「答え」により、たったひとつの道を歩まなければならないのだから。
だからこそ、その逆境を跳ね返すために、僕たちは「勉強」をし、その難問に挑むために、僕たちは「経験」を重ねている。
しかし、僕たちは、その「答え」に、後悔もすれば、納得もするし、希望を抱けば、絶望もする。
つまり、「人生クイズ」に対する正確な「答え」を導き出すのは、困難極まりないのだ。

ある哲学者は言いました。
「世界で一番強いものは質問である。」、と。

この世界を作っているのは、もしかしたら「質問」かもしれない。
「質問」に対する「答え」は、いつもその質問の世界観の中でしか完結しないからだ。
つまり、「質問」こそが、世界の中心であり、「自問自答」こそが、自分の中心なのである。
そう、僕の頭の中は、いつもグルグルと思考が巡り、僕の心の中は、いつもザワザワと感情が疼いているのだ。

人は常に悩む。

それでも僕は、この世界最強の「人生クイズ」と、常に格闘している。
しかし、その時、その瞬間で「答え」を出し続けてきた僕ではあるが、思い返してみても、それが正しかったかどうかは疑わしい。
繰り返して言うが、「人生クイズ」に対する正確な「答え」を導き出すのは、困難極まりないのだ。


小学生の僕への人生クイズ。
問 : 「転校生がいじめられている! 助ける? それとも無視する?」

中学生の僕への人生クイズ。
問 : 「お節介な母親に反抗的になるか? 今のまま従順でいるのか?」

高校生の僕への人生クイズ。
問 : 「初めて付き合った彼女の瞳が潤んでいる! ここでキス、、、、する?」

大学生の僕への人生クイズ。
問 : 「就職活動開始! 選ぶ道は、お金? 社会的地位? それとも夢?」

大人の僕への人生クイズ。
問 : 「今、彼女にプロポーズすべきなのか? で、、、ど、ど、、どんな言葉で伝える?」

これらの「人生クイズ」に対して明確な「答え」が存在するのかどうかは、どんなに「勉強」しても、どんなに「経験」しても、正直、分からない。
では、なぜ、僕は自分の出した「答え」に自信を持ち得ていないのだろうか?
もしかしたら、それは、自分自身で思考することに躊躇し、「誰か」に答えを導き出してもらおうと「依存」していたからなのかもしれない。
もしかしたら、それは、すでに自分自身が出している答えに、賛同してくれる「誰か」だけを「信頼」していたからなのかもしれない。
つまり、「依存」と「信頼」の定義を曖昧にしたまま、僕は「誰か」の隣りにいたかっただけなのだ。

ある心理学者は言いました。
「依存と信頼は異質なものであり、その間を埋めるのは自律だけである。」、と。

「人生クイズ」は、いくつかの選択肢の中から「道」を選ぶマルチプル・チョイスもあれば、自分自身で新たな「道」を切り開かなければならない応用問題もある。
「人生クイズ」は多種多様であり、その「答え」もまた千差万別。
だからこそ、僕たちは、自分自身を律し、決断し、己の人生を歩んで行かなければならない。
そこに、最初から「依存」も「信頼」も存在なんてしてないし、僕の隣りには、「誰も」存在しないのだから。

ある文学者は言いました。
「人は独りで悩み、一人で成長する。」、と。

一人ぼっちになった僕は、自信は無いかもしれないけれど、間違っていたかもしれないけれど、悩んで悩んで悩み抜いて、「答え」を出し続けてきたからこそ、手に入れたものがある。

「哲学」

人は、質問に答える時に、ある判断基準を用いる。
善か悪か。勝ちか負けか。正しいか誤っているか。
もちろん、そんな二極化できない曖昧模糊とした判断基準もあれば、言語化できない「勘」や「経験則」のようなものもある。
それは、生き方の「哲学」であったり、考え方の「哲学」だったりするのかもしれないが、成長した証しとして僕の手の中に、この「哲学」はしっかり納まっているのだ。

そして、「人生クイズ」は、さらなる難問を僕に浴びせる。

大人の僕への人生クイズ
問 : 「あなたが大切にしているものは何ですか?」

もう僕は、こんな難しい質問が襲ってきたとしても決して退くことはしない。
なぜならば、この質問のヒントもまた「人生クイズ」の中に存在するからだ。

大人の僕への人生クイズ
問 : 「あなたのそばに誰がいますか?」

現在の僕は、この質問に対して、自信を持って答えることができる。
未来の僕も、この質問に対して、自信を持って答えることができる。


答 : 「いる。 なぜなら、人は一人では生きていくことはできないのだから。」

もう、僕の哲学は揺らがないぜ!

答 : 「大切にしているのは、君だ。」

  • 11月11日生まれ
  • A型 さそり座
  • ICU 教養学部 数学専攻卒
  • 銀行員からTV業界へ転身した異色ディレクター
  • 好きな食べ物 すき焼・チョコレート・メロン
  • 好きな言葉 「移動距離とアイデアの数は比例する」
  • 将来の夢は直木賞作家
  • 現在、花嫁募集中

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