朝日新聞今日のイチオシ記事
還暦の船出/31日広島を出発
<コメント>
還暦を迎えた男性が31日、広島からヨットで日本一周の旅に出ます。きょうの「イチオシ」です。
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還暦のおじさんが夢の航海へ――。横浜市の栄清利さん(60)が31日朝、かつて転勤で暮らしたことのある広島の港から、ヨットで日本一周の旅に出る。洋上を吹き抜ける風と、それを帆に受け進むヨットに魅せられて約30年。仕事を退き、ようやく実現した「冒険」だ。「自分と同じ団塊の世代に、こんな生き方もあるって思ってもらいたい」。半年に及ぶ航海で約90の港に立ち寄り、海の魅力をまちの人たちに伝えるつもりだ。(鬼原民幸)
ヨットとの出会いは東京の化粧品会社に勤めていた28歳のとき。しぶきを浴び、船体から身を乗り出して航路を選ぶヨットマンの姿にあこがれ、スクールに通った。半年後に、60万円をはたいてヨットを買い、休みの度に神奈川県の港から海に出た。風を受ける爽快(そう・かい)感は、忙しい毎日とは別世界だった。
40歳で広島へ転勤。3年余り暮らした。宮島(廿日市市)を拠点に、瀬戸内海の島々を縫うように進んだ。神奈川沖の太平洋にはない多島美に魅せられた。翌年、約70万円でクルージング用ヨットに買い替えた。江田島市の「絵の島」で、家族でバーベキューを楽しんだ。「島に着くと時間が止まる。こんな幸せはなかった」。ヨットの名は「HAPPY TIME」。
日本一周へのあこがれは、そのころから。数カ月はかかる航海になるため、仕事をしている限りは無理だった。還暦を迎えるのを前に、今年1月に退職を決意。3カ月後、退職金をつぎ込んでこれまでより大きな全長約9メートルのヨットを買った。20年来のヨット仲間、森成次さん(60)=滋賀県高島市=を誘い、半年間の旅の準備を始めた。
広島市中区のボートパーク広島から西に航路をとり、関門海峡を抜ける。日本海を北上、函館に立ち寄り太平洋を南下し、九州を回って再び関門海峡を通る。航行距離は約5400キロ。広島へ戻るのは11月末の予定だ。
「還暦おじさん日本列島ぐるりと海の旅」と書いた名刺を作った。「こんなに素晴らしい海があるのに、航海に出る日本人は少ない。60歳になってもこんな楽しみがあると、たくさんの人に知ってもらえれば」。どんな人と街が待っているか。胸が躍るという。